プリズム!
二人は取り留めのない話を沢山した。

今まで離れていた時間を少しでも共有するかのように…。


話しをしている間にも、夏樹の熱は上がっていっている感じで、あまりにも辛そうなので「眠れそうなら寝ちゃって良いよ」と声を掛けた。

「ありがと…。ふゆちゃんも気にしないで、連絡来たら行っていいからね…」

そう言って夏樹は、最後まで自分の心配ばかりをしていた。

今は苦しげに。だが規則的な呼吸を繰り返して眠っている夏樹をそっと見下ろす。


自分はもうすぐ、行かなくてはならない。


鍵を開けっ放しで行ってもいいという夏樹に、流石にそれは不用心だということで、このアパートの鍵を預かった。

自分が出る時に鍵を掛け、ドアに設置されている新聞受けへと戻しておくことにしたのだ。

だが、具合の悪い夏樹を一人置いて行くことに、流石に後ろ髪を引かれる想いがする。


(僕は、なっちゃんに兄らしいこと、何もしてあげられてないな…)


自嘲気味に溜息をひとつ吐いた時。

ベッドの端に置いてあった夏樹の携帯が突然鳴り始めた。

やっと眠った夏樹を起こしてしまわないように、冬樹はすぐにそれを手に取った。

勿論、勝手に開く気などなかったが、少しでも音を(おさ)えようとしたのだ。

だが、携帯には見慣れた名前が表示されていた。


「…雅耶…?」

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