プリズム!
冬樹は足を止めると、顔だけをこちらに向けて振り返る。

「お前、こっちに戻って来る気はないのか?」

その言葉に、冬樹は迷うような困った瞳を見せた。

「お前の八年間にも色々なことがあったのは分かるよ。でも、お前が最後に帰ってくる場所は夏樹の隣だろう?俺は、お前達がこんな風に…離れ離れでいるのは、見ていて辛いよ…」

「雅耶…」


いつだって二人は一緒だった。それこそ、この世に生を受けたその時からずっと…。

一緒にいるのを当然のこととしながらも、だが…いつだってお互いがお互いのことを本当に大切に思い合っていて…。

そんな二人を見ているのが好きだった。

自分は、そんな二人と一緒に過ごす時間が大好きだったのだ。


雅耶は切なくなって冬樹を見つめていた。

だが、冬樹は初めは驚いた表情を浮かべていたが、柔らかに微笑むと。

「でも、今は…雅耶がなっちゃんの隣にいてくれるでしょう?」

その思わぬ言葉に雅耶が目を丸くしていると、「なっちゃんをよろしくね」そう言って、冬樹は歩いて行ってしまった。



去ってゆく冬樹の背中を見送って。

その、最後に残した冬樹の言葉に複雑な想いを抱きながらも、雅耶は気を取り直して夏樹の家のドアへとそっと手を掛けた。
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