プリズム!
狭い家の中、他に誰もいない状況で夏樹と二人きり…。

そんなの、自分の『理性が持たない』だなんて内心では思っていたのだけど。

結局は夏樹が眠っている所にお邪魔することになるなんて、本末転倒(ほんまつてんとう)も良いところだ。

勿論、具合の悪い夏樹に何かをすることなどある訳もないのだが。

(でも…夏樹が目を覚ました時に、俺が突然部屋にいたら驚くかな?)

それで嫌がられるのだけは避けたい。

(でも、冬樹に頼まれたっていうのもあるし…。ある意味、仕方ない状況だよな?)

思わず自分に言い訳しつつ、すすいだタオルをよく絞ると再び夏樹の傍へと戻った。

そして、それをそっと夏樹の額へと当てる。


「…ん……」


不意に夏樹が声を発したが、起きる様子はない。

雅耶は一息つくと、静かにベッド横へと座った。


シン…と静まり返った部屋。

何処かにある時計の秒針の音だけが小さく響いている。

物の少ない、片付いた部屋をぐるりと眺めた。


(ここで一人、寝起きして暮らしてるのか…)

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