プリズム!
ずっと実家暮らしの自分にとっては『独り暮らし』と聞くと若干憧れもなくはないのだが、実際にこうして生活の場を目の当たりにすると何だか寂しい感じがした。

それに普段は、こんな風に具合が悪くても一人でやり過ごすしかないのだろう。


誰にも頼らず、一人きりで…。


今日は、たまたま冬樹が訪れている時だったから良かったものの、もしも誰もいない時であったら、人知れず倒れていても気付かれることさえないのだ。

それを考えたら『怖い』…と思った。

(まぁ今日は…俺も、もともと来るつもりでいたから大丈夫だっただろうけど…)

でも、今のように夏樹が深く眠ってしまっていたら、連絡さえ付かずにきっとヤキモキしていたことだろう。

(せめて、野崎の家に戻ってくればいいのに…)

それは、いつでも思うことだった。


今は誰も住んでいない夏樹達の実家。

確かに一人で住むには大き過ぎるのかも知れない。

だが、あの家に戻ってくれば自分は隣に住んでいるのだし、何かあってもすぐに駆けつけることが出来る。

すぐに会いに行けるのだ。

昔そうしたように、二階の窓越しに会話をすることだって出来る。

少なくとも今よりは会える頻度(ひんど)が確実に多くなる筈なのだ。

(あの家は、以前おじさんのデータを狙って悪い奴らが出入りしていたから、鍵は全て取り替えなくてはならないだろうけど…)

それでも、こんな所で一人寂しく暮らすよりは全然良いと思う。

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