プリズム!
とりあえず、体温計を受け取って素直に熱を計っていると、雅耶がこちらを伺うように覗き込んでくる。

「そう言えば…ごめんな?寝てる間に勝手に上がらせて貰って。冬樹に頼まれたっていうのもあるけど、その…嫌じゃ、無かったか?」

妙に気を使っている感じの雅耶に、夏樹は首を傾げた。

「どうして…?逆に呑気に寝てたのは私の方なのに…。おまけに看病させちゃったみたいだし…謝るのはこっちだよ」

再び額に乗せられた濡れタオルは、雅耶が水ですすいできてくれたので冷たい。

きっと、自分が寝ている間にも同じように何度か雅耶が冷やしてくれていたんだろう。

「そんなのはむしろ良いんだ。ただ、お前が嫌だなって思わなかったのなら、それでいい」

「……ん…」


雅耶のこと、嫌だなんて思う訳ないのに。

寝顔をずっと見られていたと思うと、ちょっと恥ずかしいが…。

だが、それも何だか今更な気がした。

(既に冬樹の時に、雅耶の前で散々寝ちゃってるしな…)

夏樹は心の中で苦笑した。


「でも…」


不意に真面目な顔をした雅耶が再び口を開いた。

(…でも?)

「他の男に同じように無防備でいたら駄目だよ。家に上げるのは俺だけにしといて…」

そう言って、そっと頬に手を伸ばしてきた。

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