プリズム!
「うん…。でもね、あの時…雅耶の声が聞こえたんだ。もう、駄目だって思った時…。雅耶に呼ばれた気がした…」

「………」

「そしたら、本当に雅耶は来てくれたよね」


雅耶は、いつだってピンチに駆けつけてくれた。

あの時、雅耶の手を取った瞬間から、急に『怖い』という気持ちは消えてなくなってしまったんだ。


夏樹は、ゆっくりと手を伸ばすと。

雅耶の右手を手に取ると、優しく自らの両手をそっと添えた。

「な…夏樹…っ?」

雅耶は、そんな夏樹の突然の行動に驚くと、頬を赤く染めた。

夏樹は笑顔で雅耶を見上げると言った。

「だからね…今は、そんなに怖くない…。この絵を見ても、前みたいな悲しい気持ちにはならないんだ…」


「…夏樹…」



その、見上げてくる瞳は…。

昔…約束を交わした、あの頃の夏樹の瞳のようだった。


『なつき、この絵…だいすきなんだっ。いつか、大きくなったら…こんなキレイな海にもぐってみたいなー』

『へえーっ。じゃあボクが大きくなったら、きっと、なつきをこんな場所へつれて行ってあげるよっ』

『ほんとっ?』

『うんっ』

『じゃあ、まさやっ。や・く・そ・く・だよっ』


あの時の、眩しい夏樹の笑顔が重なる。



「まだ…あの約束は、有効…かな…?」


少しだけ不安げに見上げてくる夏樹に。

「…当たり前だろ?」

雅耶は笑顔で応えると。

堪らず、添えられていたその夏樹の手を逆に掴んで引き寄せると、胸の中にその身を抱きしめた。

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