プリズム!
人混みに圧倒されて思わず足を止めている夏樹に、雅耶はクスッ…と笑うと、

「はぐれたら大変…」

そう言って、さりげなく夏樹の手を取った。

「ま…雅耶…?」

「手を繋いでいないと、はぐれちゃうよ」

そう言って手を引いて前を歩く、何処か嬉しそうな雅耶の笑顔に。

「う…うん…」

夏樹も頬を染めつつ、笑みを浮かべた。



水族館は、入口から続いている人の流れに身を任せるように順路を進んで行く感じだった。

その進み具合はとてもゆっくりで、何より人の多さに思わず雅耶は苦笑を漏らした。

それでも自分は背がある分頭が人より上に出ていて、まだマシな方だ。

隣の夏樹はというと、その集団の中にすっかり埋もれてしまっている。

だが…。


「すごい…。綺麗…」


目をキラキラさせて、目の前の水槽を見つめている夏樹に。

(誘って良かったな…)

雅耶の胸は温かくなった。

目の前の水槽の中、水中で煌めいている色とりどりの鮮やかな魚達よりも何よりも…。

その嬉しそうな夏樹の横顔をずっと見ていたい…と思う。


その後、少し開けた所に出ると、雅耶は足を止めた。

その奥へは薄暗い通路が再び続いていたが、その先が広くなっていて、そこだけ人がばらけているのが遠目でも分かる。

(…確か、この先だったよな…)

「雅耶…?どうしたの?」

奥の通路を眺めながら足を止めてしまった雅耶を、不思議そうに夏樹が見上げて来る。

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