プリズム!
「ちょっと、良いかしら?」


突然、夏樹の周りに数人の上級生達が取り囲むように列を作った。

「……?」

夏樹は平然とその上級生達を見上げていたが、周りの友人達は、突然現れた集団に不穏(ふおん)な空気を感じて、萎縮(いしゅく)気味だった。

「あなたが、最近転入してきた1年E組の野崎さん?」

一人の大きな…若干強そうな女生徒が夏樹を見下ろして来る。

その値踏みするような不躾(ぶしつけ)な視線を、夏樹は平然と受け止めていた。


「ちょ…ちょっと、夏樹ちゃんっ。何かしたのっ?」

隣から、つんつんと袖を引きながら小さな声で話し掛けて来る愛美に。

「よく、分からない…」

夏樹は首を傾げた。

とりあえず、返答を待っているみたいなので、

「…そうですけど、何か用ですか?」

と、質問を返した。

すると…。


「あなたっ!合気道部入らないっ!?」

「…へ…?」


突然、身を乗り出すように迫って来たその先輩に、夏樹は思い切り面食らった。

周りの上級生達は応援要員なのか、ウンウン頷いている。

「今朝の痴漢騒動を見てた子がいるのよっ。あなた凄かったそうじゃないっ?」

目をキラキラさせながら、迫力ある大きな顔で言い寄られて、夏樹の背には変な汗が流れた。
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