プリズム!
「まぁ、一昔前なら『女人はこうあるべき』みたいなのはあったかもしれないがな。でも、あの子はある意味見た目で悩む必要が無いだけ幸せだと思うんだが…」

「ははは…まぁな…」

大きな声では言えないが、そこらの女の子達なんかより断然可愛い顔しながらも『気持ち悪くないですか?』と本気で自分を卑下(ひげ)している夏樹に、もっと自信を持てと言ってやりたい。


(でも、あの様子だと…ちょっとトラウマになってるんだろうな…)


きっと、夏樹の『冬樹』として過ごして来た八年間の中には、様々な想いがあったのだろう。

数々の我慢や葛藤。

そして、諦め…。

あの細い肩に圧し掛かっていた運命の重さを考えると、早くそんなしがらみから解放されて、自由に思うままに今を楽しんで欲しいと心から願わずにいられない直純だった。




「なぁ、直純?」


少し間を置いた後、仁志は静かに口を開いた。

「うん?」

「お前は、あの子に対して…かなり親身に接している方だと思うんだが、そこに何か特別な想いはあったりするのか?」

今までずっと見て来て何となく感じていたことを、思い切って仁志は口にしてみた。だが…。

「え?別に普通だろう?可愛い元教え子だしな。それだけだよ」

そう笑いながら「ありがとうございました」…と、会計に立った客に応対してレジに向かう直純の背中を、仁志はじっ…と眺めていた。


(本当に…それだけか?本人も気付いてないだけか…)

仁志は思う所があったが、それ以上は特に何も言わなかった。

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