プリズム!
「…え?学園祭?」


ある朝、いつもの電車に乗って来た愛美が声を落としながらも興奮気味に話を持ち掛けて来た。

「そう!今週なんだって。成蘭の学園祭♪夏樹ちゃんも一緒に行こうよっ」

そう誘われて。

初めて女の子同士で出掛ける…という嬉しさの反面。

(よりにもよって何で成蘭高校なんだっ。…いくらなんでもヤバイよな…?流石にバレるって…)

思わず顔を引きつらせた。

(でも成蘭の学園祭…ちょっと興味ある…っていうか、行ってみたいかも…)


実は、夏樹は学園祭や文化祭というものを今までに経験したことがない。

中学にも文化祭は勿論あったのだが、当時は未だ『冬樹』で…。

学校自体サボってばかりで、ことイベント類に関しては殆ど出席などしたことがなかったのだ。

それは、そういったものに興味がなかった訳ではなく、人との関わりを避け、何より自分自身が楽しむことを良しとしなかった為であった。

それが高校入学後、雅耶や清香達に出会ったことで、その考え方も少しだけ変わり、『冬樹』でありながらも徐々に周囲とも打ち解け、学校生活を楽しめるようになっていったのだ。


でも、だからこそ思ってしまう。

今を後悔している訳ではないけれど、もしもあのまま冬樹として成蘭に通えていたら…と。

(きっと、楽しかっただろうな…)

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