プリズム!
「でもさ、愛美?もし彼を見つけて会えたとして、本当にお礼を伝えるだけなの?」

桜が不思議そうにしている。

「え?うん…。そのつもり、だけど…?」

「えー?ただお礼を言いたいだけだなんて違くない?会いたいんでしょう?それって、その彼に恋してるんじゃないの?」

悠里が持っていた箸で愛美を指差しながら言った。

「そうだよね?だって、別にどうでもいい奴なら『ありがたい』とは思うけど、普通は会ってまでお礼言いたいなんて思わないよ?」

桜も同意見のようで愛美に視線を送った。

「えっ?そんな…私は別に…」

愛美は、思わぬ指摘に顔を赤らめながらも両手をぱたぱたと横に振った。

「自分でも、何て言ったらいいか分からないんだけど…。ただ、本当にもう一度会いたいなって思ったんだ。それだけなの」

困ったように笑う愛美に、悠里と桜は「ふーん」…と少し残念そうに頷いた。

「それって、一目惚れと違うの?」

どうしても恋の話に持って行きたいようだ。

そんな皆の会話に苦笑を浮かべつつ。


(でも、自分の気持ちを何て言ったらいいのか分からないっていうの…よく解るかも…)


夏樹はハヤシライスをスプーンでつつきながら思った。


ただ『好き』とか『大切』っていう言葉で括ってしまうのは、ある意味とても簡単だ。

だけど、それだけでは足りない想いや気持ちというのもある…と思うのだ。
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