プリズム!
「全くもう…。忘れちゃったの?前にさ、そういうことあったじゃない」

長瀬が呆れたような表情を見せた。

「…え?何が…?」

「…ったく。自分で自分のこと分かんないかなー。それって『冬樹チャン』のことでショ?」

苦笑を浮かべながらも、声を押さえながら耳打ちしてくる長瀬に夏樹は目を丸くした。

「…え…うそ…」

思わず我が耳を疑った。

「そんなこと…あったっけ…?」

「もう、これだから…。いつだったかなぁ。多分雅耶が、まだ唯花ちゃんと付き合ってた時だったかな。あの頃、俺と冬樹チャンでよく一緒に帰ってたじゃん?」

「う…ん…。そうだった…かも…」

ちょぴり思い出したくない過去を思い出してしまい、夏樹は僅かに表情を曇らせた。

…とは言っても、他人が端から見ても判らない程度のものだったが。



以前、雅耶は唯花という女の子に告白され、暫く付き合っていたことがある。

本人曰く、初対面の彼女に告白され、断ろうとしたところ『自分を知ってから返事を出して欲しい』と彼女に言われ、返事を保留にしていただけだと、からかってくるクラスメイト達には弁解をしていたが。
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