プリズム!
その子は、僅かに顔を上げると弱弱しく『ありがとう』と言った。

その礼儀正しさに好感が持てて。

『お大事に…』って声を掛けたような気がする。

そうしたら、それをずっと横で見ていた長瀬が、いつもの調子でからかってきたのだ。

『冬樹チャン、男前ーー♪』

…って。



(あれが、愛美だったのか…)


夏樹は、長瀬に向き直ると。

「ありがと。…やっと、思い出したよ」

そう言って、バツの悪そうな微笑みを浮かべた。

それに長瀬はワザとらしく溜息で応えると。

「…でも、どうするのさ?あの子に本当のこと話すの?何なら俺から話してあげようか?夏樹ちゃんのことは置いといて、あの彼はもういないんだって…」

その言葉に、夏樹は驚いて目を丸くした。

「…何よ、その反応」

「いや、一応心配してくれてるんだなって…」

いつだって、おちゃらけてばかりの長瀬だけど、いざという時には頼りになる、友達思いの奴なのだ。

「ありがと、長瀬。でも…自分で言うよ。愛美の気持ち知ってるし、下手に嘘…つきたくないんだ…」

そう儚げに微笑むと、夏樹はゆっくりと愛美を振り返るのだった。


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