プリズム!
「どう見ても男でしょう?この学校に来る前は、こんなだったんだ。これは入学時に撮った写真だから、余計にやさぐれた感じだけど…」

眉を下げて苦笑を浮かべる夏樹に。

(きっと、辛いこと…一杯あったんだろうな)

きちんと話を聞いた後でさえ、想像することも難しいような夏樹の驚きの過去に。

愛美は何とも言えない切なさを感じて、心を痛めた。


「でも…そうだね。やっぱり私が会ったのは、この『冬樹くん』だったと思う」

愛美は写真を見つめながら言った。

「うん…」


綺麗な顔立ちの男の子。

あの時は、もう少し優しい表情を見せてくれていたけれど。


隣に立つ夏樹に生徒手帳を「ありがとう」と言いながら返すと、夏樹が申し訳なさそうに口を開いた。

「ごめんね、愛美…。オレ…私…あの時のこと、すっかり忘れていて…。愛美の話を聞いていても、まさか冬樹のことだったなんて思いもしなかったんだ。愛美が会いたい人を探してあげたいなんて調子の良いこと言っておきながら…ホント、ごめん…」


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