プリズム!
(何だろう…。このモヤモヤ…)


夏樹は、いつも通りカウンターの端の席に座って、まかないをご馳走になっていた。

特に場所が決まっている訳ではないのだが、客がまだいる営業時間内なので、いつも控えめに一番端っこに座るのが習慣になっていた。

それでも、この時間になると店内は割と空いているので、カウンターに座る客は殆ど皆無で、一人でもテーブル席にゆったりと座っている者ばかりなのだが。

だが、今日は少し違った。

カウンター周りが、いつになく賑やかだった。


少し離れた向こうには、楽しそうに話す早乙女さんと雅耶。

雅耶が店に現れてからというもの、ずっと二人は楽しそうにカウンターに並んで会話に花を咲かせている。

特に耳をそばだてている訳ではないのだけれど、仕事中にもその会話が自然と耳に入って来て、二人の繋がりがどういったものなのかが解ってしまった程だった。


夏樹が思っていた通り、二人は直純の実家である『中山空手道場』繋がりであるらしかった。

薫は小学校、中学校共に雅耶が通っていた学校と同じで、中学卒業まで空手道場へも顔を出していたらしく、雅耶とは結構親しい間柄だったようだ。

時々直純先生も会話に交じりながら、終始、本当に楽しそうに中学時代の共通の友人や空手の話題で盛り上がっていて、夏樹は何だか複雑な想いを感じていた。
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