プリズム!
仕事を上がった夏樹が制服に着替えて、いつも通りカウンターの端の席に座った時、仁志は一応声を掛けた。

「別に向こうに座っても良いんだよ。折角、幼馴染みくんが来てるんだし…」

だが、夏樹は笑って首を振った。

「いえ。オレ…自分は、お客じゃないんで。端っこで良いんです。それに…折角盛り上がってるとこ邪魔しちゃ悪いし。自分には分からない話なんで…」

変な含みはないのだろう。柔らかな微笑みを浮かべると、仁志が差し出したまかないを「いつもありがとうございます」と、礼を述べて受け取った。

そして、一人姿勢を正して手を合わせると「いただきます」と、食事を始めた。

その様子を、こちら側に座っている先輩越しに幼馴染みの彼が向こうからチラチラと気にして見ているようではあったが、積極的に話を振ってくる先輩に押されているのか、流されて会話を続けている感じだった。


(この子のこと気にしてるのは一目瞭然(りょうぜん)なのに、ハッキリ言えないんだな…)

確かに、あの美人先輩から次々と振られる話題に、会話が途切れる瞬間を見極めるのは難しそうだが。

(それを優柔不断というのか。単に人が良いというのか…)

仁志は黙々と片付けをこなしながら、心の中で独りごちた。


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