プリズム!
『薫先輩とずっと話してたこと、…怒ってるのか?』

そんな雅耶の言葉に。


思いのほか戸惑っている自分がいた。

『怒る理由にもならない』

『怒ってたってしょうがない』

そう自分で言いつつも。

(…それなら、このモヤモヤは何なんだ?)

自問自答をする。


(あの早乙女さんと雅耶が知り合いだと知って驚いた)

世の中は狭い。本当にそれに尽きると思う。


(二人がとても親し気で、過去の共通の話題で盛り上がっていて楽しそうだった)

羨ましくない…と言えば、嘘になる。

自分の知らない出来事。人。その話題…。

でも、自分のいない過去なのだから仕方ない。


(綺麗な早乙女さんと、雅耶が笑顔で見つめ合うのが…?)

自分とは全然違う、憧れさえも抱かせる綺麗な彼女。

その隣で笑顔を浮かべる雅耶。


それは、自分が入り込むことの出来ない世界のようで…。

何だかよく分からないけど、モヤモヤして…。



「…夏樹?」


「……っ!」

思わず、考えに(ふけ)ってしまっていたようだ。

雅耶が視線を合わせて覗き込んでくる。

「…ごめ…ん。何でも、ない…」

夏樹は立ち止まっていた足を、ゆっくり前へと進めた。

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