プリズム!
すると、未だ立ち止まったままの雅耶が口を開いた。


「なぁんだ。ヤキモチ妬いてくれたんじゃないのか…」


口調は明るいが、ガッカリしたようにそんなことを言う雅耶に、夏樹は驚いて足を止めると振り返った。

「ヤキモチ…?……何で…?ヤキモチなんて、良いことないだろう?」


そう言いつつも、解ってしまった。

楽しそうに笑い合う早乙女さんと雅耶を見て、落ち着かない、モヤモヤした気持ち。


過去を一緒に共有出来ない、疎外感からなのだと思っていた。

(でも、違う…)


自分のこの気持ちは…。

これこそが『ヤキモチ』なのだ、と。


自らの想いに戸惑う夏樹とは裏腹に、雅耶は笑顔を見せて言った。

「そうかな?ヤキモチ妬いちゃうのは別に悪いことじゃない気もするけど。俺は、(むし)ろ夏樹にヤキモチ妬いて欲しいし…」

悪戯(イタズラ)っぽい顔をしてそんなことを言う雅耶の意図が解らなくて、夏樹は瞳を見開いたまま雅耶を見つめた。

「…妬いて、欲しいの…?」

「だって、ヤキモチを妬くってことは、それだけその相手のことが好きだからだろう?どうでも良い奴には妬いたりなんかしないだろうからさ」

「そ…れは、そうかも知れないけど…」

「俺なんかヤキモチ妬いてばっかりだよ。今日だって…」

「今日…?」


(今日って…何かあった…?)

不思議に思って聞き返すと、優しい瞳を向けてくる雅耶の表情が少しだけ曇った。
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