プリズム！
本当は、長瀬だけじゃない。

今日みたいにバイトに入っている時は、当然だが直純先生も普通に学校帰りの夏樹を目にしていたワケで…。

仁志さんだって、そうだ。

あの人は、昔はもっと淡々としていて何処か冷めた感じの人だったけど、今の夏樹を見る目が心なしか優しいことを知ってる。

そんなことを言い出したらキリがないけど、夏樹の周囲にいる男達の存在について考えれば考える程、心穏やかではいられなくなる自分がいるのだ。



「格好、悪いだろ…？ヤキモチ妬きな男は嫌い？」

静かにそんなことを言う雅耶に。


『ヤキモチを妬くってことは、それだけその相手のことが好きだからだろう？』


先程の雅耶の言葉が頭の中に蘇ってくる。

「雅耶…」


バカだな…。オレには雅耶しかいないのに…。


夏樹は俯きながら小さく息を吐くと、雅耶を見上げて微笑んだ。

「そんなことで雅耶を嫌いになんてなるワケないだろ？今日、雅耶に会えると思って嬉しかったのは、オレだって同じなんだ…」

そう言うと、雅耶の表情がいつもの人懐っこい笑顔になった。

「…そっか…。サンキュ」

そう言うと、頭の上に手を乗せてポンポン…と撫でてくる。


「でも一つだけ…。言葉遣い…戻ってるぞ？」


笑って小声でツッコミを入れられて、そこで初めて自分で失態に気付く。

「あ…またっ…」

慌てて口に手を当てると、雅耶が楽しそうに笑った。

その笑顔が嬉しくて、夏樹もつられるように笑顔になるのだった。


雅耶といると、つい…気が抜けちゃうんだ。

だって…。

これが自然体の今のオレ自身…だから…。


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