姉妹ものがたり

優しげなその眼差しに、促されるように腰を浮かすと、ハッとしたように慎也に視線を向ける。

案の定、ニヤついた顔で人参を切る姿が伺えたが、ここで座り直してもどうせテスト勉強がはかどらないことは目に見えている。


「どっかのバカが料理上手気取ってるせいで晩ご飯が遅くなると困るから、仕方なく手伝ってあげることにする」


鍋をかき混ぜながらクスッと楽しげに笑う弥生の横で、慎也が目尻を釣り上げる。


「さっきから、散々おれをバカにしてくれるなお前!いいか、おれは別に気取ってるわけじゃなく…」

「別に誰のことか、なんて言ってないのに、自覚はあるんデスネ」

「なっ!!?」


ベーっと舌を出して、先程馬鹿にされた恨みを晴らすと、慎也を押しのけるようにしてキッチンに入り、弥生の隣に入り込む。

隣でギャーギャーうるさい声を無視して片手鍋を掴めば、弥生が笑顔でお玉を差し出した。


「冷蔵庫に入ってるもの、好きに使っていいからね」
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