姉妹ものがたり

柔らかいその笑顔に、誘われるように皐月も笑顔を浮かべる。
二人で並んでキッチンに立つのは、とても久しぶりだった。


「皐月の味噌汁…」

「嫌なら今すぐ帰りやがれ」


わざとらしく顔を歪めてみせる慎也に、勢いよく肘を突き出す。
ヒョイっと避けて得意げに笑う顔にムカついて、皐月は全体重をかけて慎也の足を踏みしめた。


「お、折れる!折れる!」

「折れんわ、ボケ」


あまりの痛さに顔をしかめる慎也に、これでもかとグリグリ足を動かす。


「はーい、人参入りま…あっいけない、じゃがいも忘れてた」


鍋がグツグツと音を立て始める中に、弥生の呑気な声が響く。
温かい湯気に包まれたキッチンには、賑やかな声とスパイシーなカレーの匂いがあふれていた。





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