姉妹ものがたり
「遠慮しなくていいのよ?」
「ほんとに大丈夫ですよ!むしろ、おれを送ったあとの、弥生さんの帰りの方が心配ですから」
「いいからとっとと帰りやがれ」
玄関先で似たような会話を繰り返す二人に、いい加減嫌気がさしてきた皐月は少しばかりイライラした声をあげる。
「なんだ皐月、さみしいのか?」
明らかにバカにした顔でそう言ってのける慎也に、皐月は咄嗟に出かかった拳を既のところで押さえ込んで、貼り付けたような笑顔を浮かべた。
「呼んでもないのにストーカーのように人のあとくっついて来たと思ったら、お姉ちゃんの優しさに漬け込んで図々しくも晩飯まで食べやがって、挙げ句の果てにあわよくばお泊りまでしようとした変態野郎は黙ってとっとと家に帰りやがってください」
表情筋がつってしまいそうな程に頬を持ち上げて、必死に笑顔を保つ。
限界が近づいて口角がピクピクし始めたところで、ようやく慎也が玄関扉に手をかけた。