姉妹ものがたり
ドカっとテーブルの前に腰を下ろしてシャープペンシルを掴むと、皐月は気分を切り替えるように一つ大きく息を吐いて参考書と向き合った。
「ほんと、二人は仲良しよね」
クスッと楽しげに笑って向かい側に腰を下ろす弥生の言葉は聞かなかったことにして、皐月は一心不乱に教科書をめくる。
いつだって自分の心を占めているのは、慎也でもクラスメートの誰でもなく、弥生ただ一人なのだと言ったら、一体どんな顔をするだろうか…という考えが、一瞬皐月の脳裏を掠める。
皐月にとっては、いつだって追いかけたい人はただひとり…追いつきたい人も、追い抜きたい人も、弥生ただひとりだけなのだ。
「わからないところがあったら呼んでね」
優しげな眼差しを向ける弥生に、皐月は湧き上がってきた闘志をそっと押し殺して笑った。
「ありがとう、お姉ちゃん」