姉妹ものがたり
「おれ、別にどっかの誰かさんみたく高得点とか狙ってないんで、とりあえず高校入れたらそれでいいです」
一体何を楽しみに生きているのかと問いたくなるほど、記憶の中の皐月はいつだって教科書に齧り付いていた。
「三上さ、一応ぼくと同じ高校も、進学先の候補として考えてるんでしょ?」
唐突に聞こえてきた木田の声に、霧散していた思考を元に戻し、ついでに居住まいも正して視線を向ける。
「電車通学とかしてみたいんで、あと木田さんもいますし」
「動機が不純すぎ」
睨むようにしてジト目でこちらを見やる木田に、笑顔を返して自分の分のコーラを啜る。
「今時の中学生なんて、皆そんなもんですよ」
「今すぐ全ての中学生に謝ったほうがいいよ」
ため息混じりの木田の声を聞きながら、チラッと周りに視線を送れば、楽しげにおしゃべりをしながら教科書をめくっている者に混じって、一心不乱にノートに向かう者の姿も伺える。
その様子に、意図せずまた皐月の姿が思い浮かんだ。