姉妹ものがたり
「今度、勘違いされるようなこと大声で口走ったら本気でシメるから」
その言葉の意味が分からず首を傾げると、木田の後方から自分達に向けられた好奇の視線を感じた。
「同じ学校の人がいなかった事が唯一の救いだよ」
未だ恥ずかしさが収まらない様子の木田の声に、ようやく事態を理解し始める。
「…おれ、さっき何て言いましたっけ?」
何となく、思い出すのが怖い。
「“おれには木田さんしかいない、見捨てないで、木田さんが必要なんだ”とかなんとか随分必死なご様子で」
徐々に脳が全ての案件を処理し終えると、自分の犯した失態に思わず苦笑いが浮かんだ。
「ちょっと、声大き過ぎましたかね…?」
そこだけ聞こえていたとしたら、最早振られた恋人に追いすがる人にしか見えなかったことだろう。
「”ちょっと”なんてもんじゃないから。三上がひとりでそっち系だと思われるのは構わないけど、ぼくを巻き込むのは勘弁して」