姉妹ものがたり
皐月*大好きだから…
カランカランと小気味いい音を立てて扉が開く。
鼻腔をくすぐる香ばしい匂いに包まれて、ずんずん中に入っていくと、レジスターを置いた棚の前で雑誌を広げる人物に勢いよく詰め寄った。
「棗さん!菜穂さんをどこにやったんですか!!」
ここは、見た目はチャラいが腕はなかなかの職人と、口調は若干荒いがそれなりに定評がある接客係の双子が運営するパン屋さん。
棚に阻まれていなければ襟首を掴みあげていたところだが、しょうがないのでダンっと力強くレジ横に手をつく。
「あのさ、皐月ちゃん。その言い方だと、おれが菜穂をどうにかしちゃった、みたいになるから」
困ったように笑って顔を上げる棗に構うことなく、さらに距離を詰めてその顔を睨みつける。
「あたしは、菜穂さんに用があるんです。はっきり言って、棗さんにはこれっぽっちも用はありません」
「…その言い方、流石に傷つくよ皐月ちゃん」