姉妹ものがたり
悲しげに目を伏せる棗を無視して、その奥にある扉を凝視していると、ガタっと音がして目の前が一瞬で真っ白になった。
「棗さん、邪魔です」
「残念ながら、そこから菜穂は出てきません。なぜならあいつは、今頃デート中だから」
「菜穂さんは、仕事サボってデートに行くような人じゃありません。棗さんとは違いますから」
目の前に立ちはだかる棗の真っ白いコックコートに視界が阻まれて、扉は愚か他に何も見えない。
仕方なく一歩後ろに下がって目線を上げると、挑みかかるように睨みつける。
「そんな怖い顔しないでさ、たまには菜穂抜きでゆっくりパン見てくれてもいいんじゃない?これでもおれ、毎日心込めて作ってるんだよ」
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