姉妹ものがたり
「菜穂にはこんなに懐いてるのに…なんでかなーおれたち一応双子だよ?」
「双子だとか別に関係ないですから。菜穂さんは菜穂さんですし、棗さんはこの通りです」
「その言い方がなあ…」などとぼやきながら、棗は最後の一つになった食パンをしばらくぼんやりと見つめる。
「…ところで皐月ちゃんさ、お腹空かない?」
しばらくして、おもむろに食パンを掴んだ棗が、振り返ってにっこり笑う。
“空いていない”と答えても、どうせこの人は聞きはしない。
それがわかっているから、仕方なく黙って頷いた。
「ちょっと待ってて、いいもの作ってあげるから」
食パンを手に、ウキウキした足取りでレジ奥の扉を開け、厨房スペースに向かう棗を見送り、再び綺麗に並べ替えられたパンを眺める。
「皐月ちゃん」
不意に名前を呼ばれて顔をあげれば、楽しそうな棗の笑顔が目に飛び込んできた。
「美味しいもの食べながらさ、いっぱい話そうよ!たまには、おれが相手でもいいんじゃない?」
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