姉妹ものがたり


「じゃじゃーん!棗特製、サンドイッチスペシャルー」


数分後、“特別に”と通された厨房で出されたのは、明らかにサンドイッチではないものだった。


「…料理名に自分の名前をつけるセンスの無さはさておいても、どの辺が特製でスペシャルなのかさっぱりわかりません。ついでに言うなら、これはサンドイッチではありません」


目の前に置かれた皿の上には、こんがり焼けたフレンチトースト。


「とりあえず食べてみて。きっと皐月ちゃんは好きだと思うよ」


自信ありげに微笑む棗を訝しげに見つめて、恐る恐る皿に手を伸ばす。

ナイフもフォークもないので、手掴みで持ち上げてみると、表面は思っていたよりもカリッと焼かれていて、よく見ればちゃんと二枚のパンでサンドもしてあった。


「…いただきます」


棗の笑顔に見守られながら一口かじる…その瞬間、思わず驚きで目を見張った。


「好きでしょ?その耳の食感」


それを目ざとく見つけた棗が面白そうに声をかけてくるが、正直それどころではない。

食パンをトーストしたときの、カリカリに焼けた耳が本当はあまり好きではないのだが…これは、カリッと焼けた表面の食感とは相反するように、耳だけがふんわりと柔らかかった。
< 33 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop