姉妹ものがたり
「じゃじゃーん!棗特製、サンドイッチスペシャルー」
数分後、“特別に”と通された厨房で出されたのは、明らかにサンドイッチではないものだった。
「…料理名に自分の名前をつけるセンスの無さはさておいても、どの辺が特製でスペシャルなのかさっぱりわかりません。ついでに言うなら、これはサンドイッチではありません」
目の前に置かれた皿の上には、こんがり焼けたフレンチトースト。
「とりあえず食べてみて。きっと皐月ちゃんは好きだと思うよ」
自信ありげに微笑む棗を訝しげに見つめて、恐る恐る皿に手を伸ばす。
ナイフもフォークもないので、手掴みで持ち上げてみると、表面は思っていたよりもカリッと焼かれていて、よく見ればちゃんと二枚のパンでサンドもしてあった。
「…いただきます」
棗の笑顔に見守られながら一口かじる…その瞬間、思わず驚きで目を見張った。
「好きでしょ?その耳の食感」
それを目ざとく見つけた棗が面白そうに声をかけてくるが、正直それどころではない。
食パンをトーストしたときの、カリカリに焼けた耳が本当はあまり好きではないのだが…これは、カリッと焼けた表面の食感とは相反するように、耳だけがふんわりと柔らかかった。