姉妹ものがたり
「本当に無理してるのは、弥生ちゃんじゃなくて、皐月ちゃんの方なんじゃない?」
少しだけ、棗の言葉を頭の中で反芻してみる。
どれだけ考えても、やっぱり出てくる答えは同じだった。
「全然。あたしは、無理なんかしてません」
当然のことだ。
ただ、姉の隣に並び立ちたかっただけ。
よく頑張ったねって、隣で一緒に笑って欲しいと思って、努力していただけなのだから。
「そっか、じゃあもう大丈夫だね」
にっこり笑った棗に、促されるように厨房を出る。
すると間もなく、カランカランと小気味いい音を立てて扉が開き、ようやく待ち人の姿が見えた。
「ランチデートは楽しかったかー?」
間延びしたような棗の問いに答えることもなく、中に入って来た菜穂がこちらを見て驚いたような声を出す。