姉妹ものがたり
目が覚めると、当然のようにそこは自分の部屋だった。
見慣れた天井、着慣れたパジャマ…変わったところは何一つない、何時も通りの自分の部屋。
「…お姉ちゃん?」
遠慮がちにかけられた声に体を起こすと、薄く開いたドアの隙間から顔を覗かせる皐月の姿が見えた。
「あたし、ちょっと出かけてくるね。朝ご飯、作っておいたから」
「ありがとう、気をつけてね」
にっこり笑って手を振れば、手を振り返した皐月がそっとドアを閉めて出て行く。
誰もいなくなった気配に、ベッドの中でしばらく固まる。
同じ場面から始まり、同じ場面で終わる…いつもの夢。
「…ゆ…め……」
覚えているのはたったそれだけ。
まだ幼かった自分には、それだけしか記憶が残っていない。
香りと温もり…そして「もう、大丈夫だよ」と鼓膜を揺らす、柔らかい声。
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