たとえば呼吸をするように
たとえば呼吸をするように
朝一番、門の前で最早聞き慣れた怒声が響く。

キーン、と頭に響いたそれに、私は思わず耳を塞いだ。


「いい加減にしろ柳!」


他の生徒の妨げにならないように端に連れられ、始まってしまったお説教タイム。

この先生、話長いんだよなぁ……。


「染髪禁止!入学当初から言われ続けてただろ!なんなんだ、その色は!」


私の頭を指差して、こめかみの血管を浮き上がらせる先生。

朝からよくここまで怒れるもんだ、と感心すらしてしまう。


「お前ひとりがそんなんだと、うちの学校全体がそういう風に見られるんだぞ!」


この台詞も耳にタコ。

私──柳明日香(ヤナギアスカ)の髪色が黒から金になるまでにも、何度も何度も耳にしてきた。

まぁ、その時の対象は私じゃなかったんだけどね。


「なんだってお前、一学期の途中で……それも、受験の年に。大学生になれば金でも銀でも好きな色にすればいいだろ!」


大学生になれば……か。

それじゃ意味ないんだよ、先生。


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