たとえば呼吸をするように
そんな土屋の世界が色を変えたのは──先月のこと。


土屋がレギュラーとしてスタメンで出場していたという、同じく強豪チームとの練習試合。

その試合で、土屋は左目の視力の殆どを失った。

相手チームの選手の肘がプレー中にぶつかってしまったんだと、これもまた、試合を観に行っていた友達から聞いたこと。

左目に比例するように右目の視力も段々と低下していき、土屋は離れている人や物を判別することが出来なくなってしまった。


大好きだったバスケができなくなってしまった体で、それでも土屋は今まで通りだった。

今まで通り、キラキラと輝く笑顔のまま。




終礼が終わった瞬間、私の名前を呼ぶ沙美の声が教室に響いた。

何、と振り向くと、丁度沙美の彼氏が彼女を訪ねて姿を見せたところだった。


「今からアイス食べに行かない?暑くなってきたし」

「いいけど、私お邪魔じゃないの?」


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