たとえば呼吸をするように
せっかくのデートなのに、と首を傾げた私を見て、沙美はにやりと笑う。そして視線を少しだけずらして、声を張り上げた。


「じゃあ土屋も行かない?アイス!」

「……は?」


隣の席で机の中にある教科書を整理していた土屋の動きが、小さな声と共に停止する。

予想の斜め上を行く提案に、私も同じように固まった。


「ここで……なんで俺?」

「暇かなーって、直感」


こ、答えになってない……!


「だって3人だと明日香、私達に遠慮しちゃうんだもん。土屋がいたら明日香も気楽かなーと思って」


仲良いじゃん、ふたり。と、続けて沙美。

なんて言いながらも、私を誘った時点から沙美は土屋を誘う気だったと思う。


土屋は私の顔を横目に見た後、小さく息を吐き出した。


「まぁ……ラブラブなふたりを前にアイス食うのも可哀想だしな」

「なっ……」

「やったぁ!決定!んじゃ、私達先に靴箱行ってるねー!」


彼氏の手を取り、沙美は颯爽と教室を出て行く。

少しの気まずさを感じつつ、土屋の教科書整理が終わるのを待った。


「ごめん、お待たせ」

「んーん。行こうか」


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