たとえば呼吸をするように
どちらからともなく隣に並び、歩き出す。

教室を出る時に背中に感じた羨望と嫉妬の眼差しには、気付かないふりをして。


「ていうか、ごめんね?なんか……無理矢理来てもらう感じになっちゃって」

「いや、全然。アイス食べてーなーって、俺も思ってたし」

「絶対嘘だぁ」

「ほんとだって」


だから気にすんな、そう言った土屋に、頭を小突かれた。


「あんなアツいカップルに、フリーの柳ひとりじゃあなぁ。あまりにも不憫すぎる」

「なっ……余計なお世話だしっ!」


今度は、私が土屋の腕をバシッと叩く。

どうやら力加減がイマイチ出来ていなかったらしく、反動で少しよろけた土屋は顔を歪めた。


「って……」

「あーあーあーアイス何食べよっかなぁ」

「状況が不利になったからって話を逸らすな、話を」

「えへ、ごめんね」


変わらない。私達は何も変わってない。

土屋の目が見えていた頃から、何も。



「あ、やっと来た」


昇降口で靴箱に凭れてじゃれ合っていたふたりの目が、こちらに向けられる。


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