fermata
♭
洋館の二階の窓には、いつも白いカーテンが躍っている。
そしてその下の扉は少し開いていて、薄暗い石造りの部屋に、ぽつんと揺り椅子が揺れている。
「この揺り椅子、心地いいね」
「そうだね。ずっとそこにいたよ」
揺り椅子に座ると、階上からピアノの音が聴こえてくる。
ドビュッシーの『月の光』。
揺り椅子を、優しい月の光が照らしている。
「ここがお気に入りの場所だった?」
「そう」
「一緒だね」
「でももう行けない」
ふ、と月の光が陰り、曲が終わった。
そのまま、ゆらゆらと揺り椅子は揺れる。
「さすがに協奏曲第三番は、話しながらは弾けない」
「世界一難しいから?」
階段に言う。
踊り場に映ったカーテンの影が、笑うように風に揺れた。
一拍してから、再びピアノの音が聴こえて来た。
ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第三番』。
ゆらゆら揺れる揺り椅子に座って、ピアノの音に目を閉じる。
そしてその下の扉は少し開いていて、薄暗い石造りの部屋に、ぽつんと揺り椅子が揺れている。
「この揺り椅子、心地いいね」
「そうだね。ずっとそこにいたよ」
揺り椅子に座ると、階上からピアノの音が聴こえてくる。
ドビュッシーの『月の光』。
揺り椅子を、優しい月の光が照らしている。
「ここがお気に入りの場所だった?」
「そう」
「一緒だね」
「でももう行けない」
ふ、と月の光が陰り、曲が終わった。
そのまま、ゆらゆらと揺り椅子は揺れる。
「さすがに協奏曲第三番は、話しながらは弾けない」
「世界一難しいから?」
階段に言う。
踊り場に映ったカーテンの影が、笑うように風に揺れた。
一拍してから、再びピアノの音が聴こえて来た。
ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第三番』。
ゆらゆら揺れる揺り椅子に座って、ピアノの音に目を閉じる。