愛言葉ー溺愛ー
彩芭をあやすように撫でてから祭莉の方を向いて、手を差し出す。
「はい。ばいばい、彩芭くん。お邪魔しました。」
少し遠慮気味に手を伸ばす。すると大きな手でぎゅっと掴まれた。彩芭にお礼を言って、手が引かれるままに玄関を出ていった。
茜色に染まった空は地上を思わせる。ただ、違うのは聞こえてくる鳴き声。鴉ではなくコウモリの甲高い声。
わらわらと集まる闇ノ住人。ゴーンという重い鐘の音とともに闇市が始まった。
「あの、闇市ってなんですか⋯?」
「闇市は闇ノ住人が定期的に開く市の事ですよ⋯って、そのまんまですね。闇市では人間が売られていますので、一人で出歩くと簡単に商品にされてしまいます。」
そう言って、ぎゅっと手に力を込める。それは、絶対に離さないから安心して、という意味が込められていた。
「人間が⋯商品⋯っ?」
すると、目の前の広場に人間の女性が倒れているのを見つける。服はボロボロで膝と手からは血が流れていた。
「あ⋯っ!」