名前のない物語





『ぼくはそんなこといわないよ』




彼はそう言って彼女に近づこうとします。


しかしそれを拒絶するように二つの風船は更に大きさを増しました。


彼女は知っているのです。

彼が町の人気者であることを。


そんな彼が言わないはずがありません。


彼の周りの人々は彼女を「うそつき」と呼んでいるのですから。


そう思った彼女は耳を塞ぎ体を縮め風船の中に閉じ籠ってしまいました。




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