運命の扉
駅までの、ほんの数分。あたしたち三人はあっという間に仲良くなった。
「じゃ、また明日ね。」
駅前のロータリー。あたしたちの家は、この駅から歩いて数分の距離にある。ここから数駅離れたところに住む敬ちゃんとはここでバイバイ。手を振って背を向けた途端。
「アドレス教えて!」
敬ちゃんに勢い良く腕を捕まれた。
「あっ、ごめん。」
強く掴んだ手をパッと離した。
「真帆の番号…教えて。」
目がとても真剣で吸い込まれそうになる。
「もっと仲良くなりたいんだ。」
「う、うん。」
あたしはカバンから携帯を取出す。
「これ俺のQRコード。読み取ってもらえる?」
カメラからQRコードを読み取って敬ちゃんの番号を携帯に登録する。あたしの携帯から登録した番号へと電話を発信する。
「来た!ありがとう。気を付けて!」
手をブンブンと振って駅の中へと入っていった。敬ちゃんを見送り、汐里と二人で歩きだす。
「真中くんって、真帆に興味があるんじゃない?」
汐里がくすっと笑う。あたしに興味?
「だって、わたしには聞かなかったよ。番号。」
そう思えば、聞いてなかったかも。
「いい人そうだね。」
汐里は、どうしてこんなこと言うんだろう。
「…うん。」
あたしは静かに頷く。
「真帆と真中くんが付き合ったら、わたしも頑張ろうかな。」
えっ。思わず汐里の顔を見る。
「悠人に…告白しようかな。」
高鳴る鼓動。体が一気に熱を保つ。
「…そっか。」
言葉が上手く出てこない。
「でも、まだそんな段階じゃないか。真中くんと出会ったばっかりだもんね。」
また汐里が微笑む。
「そ、そうだよー!あたし今日知ったんだよ?」
あたし、ちゃんと平然装えてるかな。
「ふふっ。真帆にも早く好きな人出来ないかな。お互い恋の相談したりしたいな。」
扉が完璧に閉じるのは一体いつになるんだろう。
敬ちゃんが現れて平気だったはずの気持ちが、寂しそうに音をあげ始めた。