運命の扉

頭の中で悠人のことが、ぐるぐると回る。

気付くと掃除もショートホームルームも終わり、委員の仕事を任される時間。一日中考え込んでしまった。このまま二人きりで仕事するなんて気が重いな。
「井上さん、内原くん。」
教壇の前で向井先生が手招きをしている。
「行くぞ。」
悠人に促されて重い足を運ぶ。
「昨日回収してもらったアンケート、男女別に誕生日順に並べてほしいの。」
今日は時間がかかりそうだ。さすがに汐里には帰ってもらわないと。
「わかりました。」
悠人が返事をする。
「じゃあ、今からアンケートを持ってくるから教室で待っててもらえる?」
「はい。」
向井先生はささっと教室から出て行った。

「汐里のこと?」
あたしが言葉にしなくても、考えてることは伝わるらしい。まあ、大概考えるのは汐里のことだからかもしれないけれど。
「うん。昨日、仕事が終わるまでずっと待ってたから。」
「先帰ってろって言ったのに?」
「寂しいからって。」
「はあ。」
悠人は呆れたようにため息をついた。
「お前な、これから先もそうさせるつもりなわけ?」
なぜかちょっぴり苛立ってる。何か気に障ること言ったかな。いつにも増して刺々しい。
「別にあたしは…。」
「これから先、俺らは進学したりバラバラになってくんだよ。ずっと一緒なんてあるけない。汐里には少し一人行動も慣れさせなきゃダメなんじゃねぇの?」
ごもっともな意見。腹は立つけど何も言い返せない。
「お前が心配する気持ちもわかんなくねぇけど、汐里のために早く帰らせろよ。」
そう言って、自分の席へ戻っていった。黙って悠人の背中を見つめることしか出来ない。ずっと一緒にいられないなんてわかってる。わかってるけど、あたしは悠人みたいに突き放すことなんて無理だよ。


「真帆。」
あたしたちの様子を心配して、美佳が傍に来てくれた。
「大丈夫?悠人かなり怒ってたけど。」
「汐里のために、一人行動慣れさせろって言われちゃった。」
「んー、あたしもちょっとは思うけどね。」
美佳は肩をすくめて苦笑いをした。
「…そうだよね。」
「とりあえず、今日はあたしが汐里と一緒に帰ろうか?」
機転をきかせてくれた。
「すぐに一人は慣れないと思うし、汐里には事情説明しとくね!」
「ありがとう。」
「いえいえ〜。じゃあね!」
美佳は急いでカバンを手に取り、笑顔で教室を出て行った。
あとでお礼のメール送らなきゃ。

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