運命の扉

次々と教室から生徒の姿が消えていく。同時に、騒がしくなった教室も静かになる。
「内原。」
部活に行く準備をした敬ちゃんが悠人に声をかけた。あたしは、二人のやり取りを静かに見つめる。
「まじ、ありがとう。助かるわ。」
「あぁ、いいよ。俺も一応委員だし。」
「俺さ、内原とも仲良くなりたいんだよね。」
敬ちゃんは日に焼けた大きな手を悠人の前に差し出した。
「内原と違ってうるさいし、ただの野球バカだけど。」
悠人は黙って目を見て、小さく頷きながら差し出された手を握った。その光景を見て、少し安心した。ずっと素っ気ない態度のままだったら、どうしようって考えてたから。
「じゃあ、俺部活に行くわ！２人とも頑張ってね。」
敬ちゃんは手を元気よくブンブンと振って、教室から去っていった。
「はぁ。あいつ疲れる。」
悠人が苦笑いをした。
「そうかな。一緒にいると楽しいよ。」
素直で正直で純粋で。昨日知り合ったばかりだけど、彼の魅力が凄くわかる。
「お前って、真中みたいなのがタイプなの？」
「えっ？」
驚いて悠人を見ると、遠い目をしてる。朝と同じ目。ねぇ、何を考えているの？