運命の扉
「ねぇ〜、汐里って“好きな人”いる?」
あたしの部屋でTVを見ているときに聞いてみた。汐里は顔を赤く染めて、膝の上に置いてあるクッションに視線を移した。誰かはわからないけれど、汐里の頭の中には好きな人の顔が浮かびあがっている様子だった。
「いるの?」
もう一度、あたしが聞いてみると汐里は静かに首を縦に振った。
「誰?!どんな人ー?あたしが知ってる人?」
思わず大きな声を出して迫ってしまう。誰だろう。同じクラスの子だろうか。確か、学内のアイドル的存在の人が汐里のクラスには数人いたはずだ。
「絶対、誰にも言わない?」
「言わないよ!」
「んーとね。」
照れてなかなかスキナヒトの名前を出せずにいる汐里の姿が、姉妹ながらも可愛いと感じてしまう。ドキドキしながら答えを静かに待つ。
「悠人。」
一瞬、時間が止まった、ような気がした。胸の鼓動が早まり、頭に血が昇っていくのを感じた。
「そっ、そうなんだ!悠人優しいもんね。うまくいくと良いね!」
「ありがとう。」
「いやー、まさか汐里が悠人を好きなんて。気付かなかった!」
「真帆は、いないの?スキナヒト。」
「あはっ。いない、いない!あたし、男の子に興味ない。」
「そっか。」
「汐里、頑張ってね!」
「……悠人には言わないでね?わたしが好きなこと。」
「言わない、言わない。約束する。…告白とかしないの?」
人って動揺すると何を話しているのか自分でもわからなくなるものなんだね。次々と勝手に言葉が口から出て行く。
「うん。まだしない…ていうか、自信ないし。それにね、わたし決めてることがあるんだ。真帆に彼氏が出来たら打ち明けるって。」
「なんで、あたしに彼氏が出来たら?」
「そうすれば、真帆の彼氏と、もし上手くいけばわたしと悠人。4人で遊べるでしょ!どっちかが一人になることなんてないから。」
「そ、そっか。じゃあ、早く彼氏作らなきゃね〜!」