憧れの染谷くんは、いつも
・・・・・

ーー昼食後、私の目線はパソコンの画面と時計を行ったり来たりしている。


(そろそろ染谷くんもご飯食べ終わった頃、だよね)


プレゼントを渡すには昼休みがちょうどいいと考えていたが、いざそのタイミングになるとますます緊張感が高まってくる。
私はプレゼントを入れた紙袋を抱えて、落ち着かない気持ちと一緒に営業部フロアへと向かった。



(染谷くん、いるかな)


エレベーターを降りた私は、あたりを見回しながら歩きを進める。そんな時、通りがかった部署で立ち話をしていた人たちの話が聞こえてきた。


「染谷が受注した案件、すごいよな」

(え?!)


その名前を聞いて慌てて身を隠してしまうあたり、私は何て情けないのだろう。明らかに挙動不審だが、彼らからは死角になっていて見えない隙間に入り込めた。給湯室へ続くその通路の奥では、女子社員の楽しげな笑い声が微かに聞こえてくる。


「ーー他社にほぼ傾いていたのにギリギリでひっくり返したってさ。さすがだよ」


名前を聞くだけでも心拍数が跳ね上がるというのに、内容がさらにドキドキを加速させる。


(これじゃ盗み聞きになっちゃう。話題を変えてくれないかな……)


手が触れた通路の壁が思いのほかひんやりしていて、目の覚める思いだ。

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