憧れの染谷くんは、いつも
ふたりきり
「ここがいいかな」
「ここって……」
染谷くんに連れて来られたのは、会社近くにあるいつものカフェだった。つい先日室長とランチに来たことが記憶に新しい。
てっきりビル内に留まって休憩ルームやエントランスあたりに行くものだと思っていたため、外に来たことは予想外だった。
店内に入ると思っていたよりも閑散としていて、落ち着いて話ができそうだった。
「何飲む? 俺はコーヒー」
メニュー表を手渡されて、凝視する。いつもなら迷わず私もコーヒーにするところだが、今は少しでもリラックスしたい。
「えっと……私はハーブティーにしようかな」
「了解。ーーすみません」
染谷くんが私の分まで手際良く注文してくれて、一段落着いた。
「この時間は空いてるんだよ」
「そうなの?」
ランチタイムの混みようからすると、信じられない。オフィス街の夜は、昼間と全く違う顔を見せるようだ。
「うん。俺の秘密の休憩場所ーー松井に話したからもう秘密でも何でもないけど」
「私、誰にも言わないよ!」
信用されたくて思わず声に力が入ると、染谷くんは吹き出している。
「そうじゃなくて……。はあ、俺今すごく癒されてるんだけど」