憧れの染谷くんは、いつも
(び、びっくりした……)
私は机に突っ伏して大きく息を吐いた。
ユミと呼ばれていた子は、確か営業事務の仲川優美さんだ。2つ下の代だったと思う。一緒にいたのは彼女と仲のいい東海林さんだろう。
(仲川さん、染谷くんのこと、好きなんだ)
営業部のことはよくわからないけれど、彼女がアイドル的な存在だということは一目瞭然だった。栗色のつやつやしたセミロングに、アーモンドみたいなパッチリした目。いつ見かけてもふわふわとかわいらしい印象だ。
その彼女の、鈴のようなコロコロとした愛らしい声が不安に揺れていた。仲川さんのような素敵な人であっても、恋をすると不安になるのか。
そこまで考えて、ハッとした。
高瀬くんの言っていた、染谷くんの好きな人とは、仲川さんのことなのではないか。
お互い気付いていないだけで、両思いなのかもーー。
途端に、身震いがした。
私はまた、知らないうちに染谷くんに迷惑をかけていたんだ。私の面倒なんて、見ている場合じゃなかったはずなのに。
しかも私はそれをどこか、心地良く思っていたようで。
ーー本当に、私はなんて図々しいんだろう。
「はあ」
長いため息を吐くと、お腹の奥がチクンと痛んだ。