憧れの染谷くんは、いつも
システムの裏側
最近私は、いつもより早めに出勤するようになった。最初は早起きが辛かったけれど、慣れてくると朝の空気が気持ちいい。
それに、前の日疲れて対応記録が入力出来なかった分も確認できるし、振り返ることで今日の業務での注意すべきことも見えてくるしで、いいことづくめだ。
ーーと、もっともらしい理由を並べつつも。
本当はただ、染谷くんに会いたくないだけなのだけれど。
(私、もしかしたら)
この可能性だけは、無いと思っていた。あってはいけないことだと、また〝思い込んで〟いたのかもしれない。
(染谷くんのこと、好きなのかな)
記録を入力する手が止まる。
この前高瀬くんに〝本当はそんなこと思ってない〟と言われたとき、私の心の蓋が開いたような気がしたのだ。
いつも優しい染谷くん。
初めて会ったときから『助け合おう』と言ってくれて、自分の方が忙しいはずなのに気にかけてくれる。
(私、染谷くんに甘えてたんだ)
それをいいことにいつも頼ってばかりで。こんなことになるなら、もっと早く気付けば良かった。染谷くんに釣り合うくらい自立出来ていればもしかしたらーー。
(いや、それでも無理だよね)
自分の甘い考えに苦笑しながら、お腹を押さえた。こんなときに限って、痛みがひどい。
(今更何を思ったって、もう遅すぎる)
今私がすべきことは、与えられた仕事をきちんとこなすこと。
私に再認識させるかのように、始業ベルが鳴った。