憧れの染谷くんは、いつも
再び、朝のエレベーター
目が覚めると、頭が重い。
昨日なかなか寝付けなかったせいだと思う。
久しぶりに飲んだお酒は二日酔いになる量ではなかったけれど、こっちはこっちでお腹をチクチク攻撃している。
起き上がって少しぼんやりした後、気合いを入れようと洗面所へ向かった。
私は、〝今現在の〟いつも通りの時間に出社した。
エレベーターに乗ったのは、私ひとり。
前はあんなにぎゅうぎゅうだったエレベーターが、時間を早めるだけでがらんとしてしまうことを知った。これは嬉しい環境の変化だ。
ドアを閉めようとしたらこちらに向かってくる足音が聞こえたので、〝開〟のボタンを押し続けて待った。
いつも一緒になる人は大体同じだ。毎朝のように顔を合わせるので、他部署でも何となく挨拶をするようになった。この足音は総務部の人かなと思いながら、何か話題を探そうと頭の中を回転させる。
「ありがとう」
総務部の人は、もっと声が低くて早口のはずだ。違和感を覚えて顔を上げると、目が合った。
乗ってきたのは、染谷くんだった。