憧れの染谷くんは、いつも

「……染谷くん」

「おはよ」


少し前と何も変わらずに、彼は私の隣に立った。


「お、おはよう。……早いね」

「うん」


朝イチで急ぎの仕事があるのかな、と思いつつ、閉まる扉を見つめる。


ーーまさかのふたりきりになってしまった。


私は昨日のこともあり、ドキドキしたまま重力を感じて俯いていると、独り言のように呟かれる。


「ーー誰かさんが、会社に来る時間早くしたから」

「えっ」


隣を見ると、いつもの優しい笑顔。
まるで昨日もおとといもこうして普通に話していたような錯覚をしてしまいそうだ。


(誰かって……)


この状況では、私しかいない。
私に合わせて早く来たと言っているように捉えられる言葉は、どうしようもなく私を苦しくさせる。


「松井とこうやって話すの、久しぶり」

「うん。そうだね……」

「どう? 最近」


どこかで聞いたことのあるセリフだなと思いつつも、返そうと言葉を探す。


「え、えーと、ふつ」

「普通なわけないだろ」


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