憧れの染谷くんは、いつも


「松井さん、新しいシステムはどう?」

「室長」


振り返ると、室長が立っている。きりっとした雰囲気で仕事ができるのに、部下への配慮も忘れない素敵な女性だ。


「まだ入力を始めたばかりなので、戸惑うところも多いんですが、使いやすいです」


さっきの、単純なミスで起こったエラーを見られたかもしれないと思うと恥ずかしいけれど。苦笑いをしながら頭をかく私を見て、室長は微笑んだ。


「そう。一番対応記録が充実している松井さんにそう言ってもらえるなら間違いないわ。これからも頑張ってね」


まさか今までの対応記録について褒められるとは思っていなかったので、顔が一気に熱くなる。


「……ありがとうございます」


こうやって陰で見ていてくれる人もいるんだと思うと、胸の奥が暖かい気持ちになる。私も室長みたいに、小さなことにも気付ける人になりたい。そうしたらこれから先、もしかしたら染谷くんのことをひっそりと支えていけるかもしれない。直接関わることはもうできないと思うから、せめて。


< 47 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop