憧れの染谷くんは、いつも
休憩ルーム(1)
・・・・・
午後6時半頃、予告通り染谷くんは私のいるフロアへやってきた。
「松井」
小声だったけどよく通る声で名前を呼ばれる。
電話の応対中だった私は受話器を持ったまま慌てて振り返ると、染谷くんは指を差しながらパクパク口を動かす。
〝あっちで待ってる〟
その指は休憩ルームの方を差していた。私がそのまま2、3度高速で頷くと、染谷くんはくるりと向きを変えて歩いて行く。バッグも持っていたし、染谷くんはそのまま帰れるようだった。
(どうしよう。染谷くんを待たせてしまう)
この前も高瀬くんを待たせたばかりだったことを思い出して、気持ちが焦る。そして、こういう時に限って事はスムーズに運ばない。
『ーーもしもし?』
「し、失礼いたしましたお客様ーー」
染谷くんには悪いと思いながら、私は長引く対応に戻った。
午後6時半頃、予告通り染谷くんは私のいるフロアへやってきた。
「松井」
小声だったけどよく通る声で名前を呼ばれる。
電話の応対中だった私は受話器を持ったまま慌てて振り返ると、染谷くんは指を差しながらパクパク口を動かす。
〝あっちで待ってる〟
その指は休憩ルームの方を差していた。私がそのまま2、3度高速で頷くと、染谷くんはくるりと向きを変えて歩いて行く。バッグも持っていたし、染谷くんはそのまま帰れるようだった。
(どうしよう。染谷くんを待たせてしまう)
この前も高瀬くんを待たせたばかりだったことを思い出して、気持ちが焦る。そして、こういう時に限って事はスムーズに運ばない。
『ーーもしもし?』
「し、失礼いたしましたお客様ーー」
染谷くんには悪いと思いながら、私は長引く対応に戻った。